「影に愛された君よ、なぜそう生き急ぐ。」とぐろを巻く触手が語り掛けてくる「叶えたい夢があるからです」そう答えると深淵は笑った「君は夢を見ているんだよ。叶えたいならそう願うだけで実現できるのさ。」折り重なった触手が笑うように鼓動する「これは夢なんでしょうか。ならどうして僕は目覚めることが出来ないのでしょう。」触手が乱れ、足元へ這い寄ってくる「云った筈だよ、君は影に愛されているんだ。影に愛されている中で、光に触れることは出来ない。」王立図書館蔵書「イザの夢想」より抜粋